最近、近所のコナミスポーツクラブが閉館するという話題を耳にし、思わずこうつぶやいてしまいました。
「やっぱりな……」
コロナ禍による利用者減少が直接の原因に見えるかもしれませんが、実は10年以上前から、業界の空気はどこか怪しげでした。
この記事では、僕がかつて約7年間コナミスポーツクラブで働いていた経験をもとに、制度の変化や現場の雰囲気、そしてジム業界の内情についてお話しします。
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ブラック企業を辞めて選んだ道が、ジム業界だった
20代前半、僕は典型的なブラック企業で消耗しきっていました。毎日のように終電、休日も電話が鳴る――そんな日々に限界を感じていた頃、街中で見かけた「スポーツクラブのアルバイト募集」のポスターが目に留まりました。
体を動かすことが好きだった僕にとって、それはまるで救いのように思えました。「ここなら健康的に働けるかも」と思い、すぐに応募。アルバイトとしてスタートし、数年後には契約社員に。
気づけば約7年間、コナミスポーツクラブで働いていたことになります。
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「正社員登用」への高すぎるハードル
契約社員として実績を積む中、何度も正社員登用試験にチャレンジしました。筆記と面接の2ステップ構成で、どちらもなかなかの難関。
現場での実績――入会促進や物販売上にも貢献していたはずなのに、どうしても筆記が突破できず、不合格が続きました。
実務能力よりも学力重視な傾向に、「ここまで学力求めるのか……」と心が折れそうになる場面も。
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社内ライセンス制度の突然の終了
当時、コナミスポーツクラブでは「社内ライセンス制度」という研修・テスト制度がありました。スタッフの指導力や知識を一定以上に保つための取り組みで、適度な緊張感とプロ意識を生む仕組みだったと思います。
しかし、数年後、気づけばその制度は静かに姿を消していました。特別な告知があったわけでもなく、自然にフェードアウトしていったのです。
その頃から、現場に少しずつ変化が現れ始めました。経験豊富なベテランスタッフが次々と退職し、現場にノウハウが残らなくなっていったのです。
仕事ができる人ほど先に辞めていく――そんな悪循環が、少しずつ確実に進行していました。
混乱する現場と、不安定な経営方針
さらに追い打ちをかけたのが、経営層の頻繁な交代。社長や支店長の方針がコロコロと変わるため、現場では「昨日と言ってることが違う」「準備していたのに中止になった」などの混乱が日常茶飯事でした。
赤字続きの施設も増え、「このまま働き続けて大丈夫だろうか…」と不安を抱くスタッフも少なくなかったように思います。
特に大型店舗は、光熱費・家賃・人件費の負担が重く、黒字を維持すること自体が難しかったという話もよく聞きました。
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コロナ禍が引き起こした“最後の一撃”
そんな不安定な状況の中、2020年に新型コロナウイルスの流行が始まりました。ジムという「密閉・密集・密接」が避けられない業態にとっては、大打撃です。
感染対策に尽力しても、利用者は戻らず、運営維持が困難に。僕の地元でも、かつて勤務していた2つの施設が閉館へと追い込まれてしまいました。
経営体力の弱い施設ほど閉鎖のスピードは早く、「あのジムも…」「ここもなくなるのか…」と、目に見えて業界が縮小していくのを感じました。
ジムの収益構造は、想像以上に厳しい
ジムの経営は一見シンプルに見えますが、実際は複数の収入源に支えられています。主な柱は以下の通りです。
- 月額会費:会員から定期的に徴収する基本料金。最も安定した収入源です。
- 有料プログラム:ヨガ・ピラティス・エアロビなど、専門講師によるレッスンの参加費。
- パーソナルトレーニング:トレーナーによるマンツーマンサポート。1回ごとの課金制で高単価。
- 物販:サプリメント、スポーツウェア、ドリンクなどの販売。
- 法人契約:企業の福利厚生として、社員向けに会員契約を結ぶケース。
- 施設利用料・レンタル:ロッカー、スタジオの貸出、シャワー利用などのオプション料金。
このように複数の収益手段があるとはいえ、光熱費・人件費・家賃などの固定費が非常に高く、特に大型店舗では黒字化が難しいのが実情です。
コロナ禍で利用者が激減し、会費収入が落ち込んだことで、多くの施設が維持困難に陥りました。
働き方の現実と、心身の限界
当時(2010年ごろ)、契約社員として働いていた僕の年収は200万円を下回り、月によっては10万円を切ることもありました。
今以上に非正規雇用の待遇が厳しかった時代とはいえ、生活を成り立たせるにはかなり厳しく、給与体系も年俸制14分割でボーナスなし。残業ありきで稼働時間を増やさなければ、とても暮らしていけない状況でした。
実際、多い月は260時間を超える労働時間になることもあり、体力だけでなく、メンタルにもじわじわと負担が積み重なっていきました。
「好きな仕事」のはずだったのに、次第に「体を壊す前にやめないと」と思うようになっていたのです。
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「ジムスタッフ」って、実は裏方仕事だらけ
「運動好きには天職じゃない?」なんて言われることもありましたが、実際の業務は想像以上に多岐にわたっていました。
- 会員の入退会手続き
- 有料レッスンやイベントの運営
- 施設内の清掃・消毒
- トレーニングマシンの監視・点検
- トレーニングの指導や接客
- チラシ作成や売上管理などの事務作業
インストラクターとしての仕事は、むしろごく一部で、裏方業務の比重が非常に大きいのが現実でした。
それでも、あの7年間がくれたもの
制度も給与も決して恵まれていたとは言えません。けれど、コナミスポーツクラブでの7年間は、間違いなく今の自分の土台を作ってくれた時間です。
働くとはどういうことか。組織の中でどう自分の価値を発揮するか。そんなことを、身をもって学べた気がします。
そして今、こうして振り返りながら思うのです。
「あの経験があったから、今の自分がある」と。
ちなみに、現在のコナミスポーツは?
僕が退職してから10年以上が経ちますが、最近では新しい取り組みも増えているようです。
たとえば、ピラティス専門のスタジオ「Pilates Mirror」や、短時間集中型の「Personal 30」といった小型・特化型施設を展開し始めています。
さらに、東京都町田市や大阪市などで、自治体からスポーツ施設の運営を受託するなど、資産を持たずにエリア拡大を進めるスタイルも強化中。
2025年3月期の決算では、スポーツ事業の売上高は前年より微増、営業利益は大幅に増加し、収益構造の見直しと経営安定化が進んでいることがうかがえます。
かつての現場で感じた課題と、いまの動きを照らし合わせると、「変わろうとしているのかもしれないな」と、ふと思うのです。
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