まんまるな体に、くりくりの目。
YouTubeやInstagramなどのSNSで見かけるリチャードソンジリスは、寝ている姿やごはんを食べる姿がとても愛くるしく、「この子と暮らしてみたい」と感じる人も多いのではないでしょうか。
一方で、実際に飼ってみると、SNSや動画ではほとんど語られない現実があるのも事実です。
脱走のリスク、噛む・齧る本能、発情期による行動の変化、医療や飼育環境の問題など、可愛いという理由だけでは済まされない場面が数多くあります。
この記事では、リチャードソンジリスは「飼うのはやばい」と言われる理由について、実際に飼って分かった現実と他の飼い主の声を踏まえて整理しています。
お迎えを検討している方が後悔しないために、事前に知っておくべき注意点と覚悟すべきポイントを正直にお伝えします。
リチャードソンジリスの生態と飼育難易度

リチャードソンジリスは、北米の草原地帯に生息する地上性のリスです。 木の上で暮らすリスとは異なり、地面を走り回り、自分で巣穴を掘って生活する動物です。
この「地上性・巣穴生活」という生態が、飼育の難しさに直結します。
- 隙間や狭い場所を見つけるのが非常に得意
- 動きが素早く、一瞬の油断で逃げる
- 探索欲が強く、行動を止めにくい
- 野生の警戒心が強く残っている
そのため、脱走や事故が起こりやすく、環境管理には常に注意が必要です。 また、人に慣れている個体でも、噛む・齧るといった行動が出ることがあります。
さらに、季節の影響を強く受ける動物で、発情期を中心に行動量や性格、食欲が大きく変化します。 一年を通して安定した性格を期待できる動物ではありません。
リチャードソンジリスは、見た目の可愛さとは裏腹に、 生態を理解し、覚悟を持って向き合う必要がある飼育難易度の高い動物です。
覚悟① 脱走・逃走リスクは想像以上に高い

リチャードソンジリスを飼っていて、最も神経を使うのが脱走・逃走のリスクです。 他の飼い主の体験談を見ても、この点を挙げる人は非常に多く、 「飼うのはやばい」と言われる最大の理由の一つになっています。
リチャードソンジリスは地上性で動きが非常に素早く、探索欲も強い動物です。 わずかな隙間や油断を見逃さず、自分が入れそうな場所を見つける能力に長けています。
脱走が起きやすい理由
この脱走リスクは、性格の問題ではなく生態そのものに由来します。
- 地上性で瞬発力が高く、動きが読みにくい
- 狭い場所や暗い場所に入り込む本能が強い
- 一度隠れると、呼んでも出てこないことがある
ケージの開閉時や部屋んぽ中のわずかな油断が、そのまま脱走につながるケースも珍しくありません。
実際に起きた脱走体験
我が家でも、実際に脱走でヒヤッとした経験があります。 あるとき、リチャードソンジリスが網戸を突き破って外へ脱走してしまいました。
幸い、エアコンの室外機の下に隠れていたため、すぐに見つけて確保することができましたが、 もしそのままどこかへ行ってしまっていたらと思うと、今でもゾッとします。
この出来事以降、「網戸があるから大丈夫」という考えは完全になくなりました。 現在では、脱走のリスクを考えて網戸にすること自体を避けています。
脱走は命に関わる問題
脱走してしまった場合、感電、挟まれ事故、踏みつけ、外敵との遭遇など、 命に直結する危険が一気に高まります。「少しだけなら大丈夫」「今までは平気だった」という油断が、 取り返しのつかない結果につながる可能性もあります。
リチャードソンジリスは、可愛いからと気軽に放せる動物ではありません。 逃げる前提で環境を整え続ける覚悟がなければ、飼育は非常に難しくなります。 この脱走リスクこそが、「飼うのはやばい」と言われる最大の理由です。

覚悟② 噛む・齧るのは本能。歯のトラブルは命に関わる
リチャードソンジリスを飼っていると、 噛む・齧る行動は避けて通れません。 これは性格やしつけの問題ではなく、生き物としての本能です。
前歯は一生伸び続けるため、常に何かを齧って歯を使う必要があります。 その結果、齧られる対象は日常生活のあらゆる場所に及びます。
- 家具や木製部分
- 壁や床の角
- 電源コードやケージ周り
しかし、本当に注意すべきなのは「物が壊れること」ではありません。 歯そのものの病気が、命に直結する問題になることがあります。
実際に経験したオドントーマ
我が家のリチャードソンジリスは、 オドントーマ(歯由来の腫瘍)を発症しました。 もともと上の前歯が1本しか生えておらず、 「おかしいな」と感じて病院を受診したことがきっかけでした。
検査の結果、オドントーマによって 上の前歯の腫瘍が鼻の鼻道を塞ぐ形で成長しており、 呼吸が苦しそうな状態になっていました。 そのため、手術を受けることになりました。
現在は、上の前歯を使っておらず生えっぱなしの状態のため、 定期的に動物病院で歯を切ってもらう通院生活を続けています。
- 歯は自然には治らない
- 一度発症すると長期的な管理が必要
- 通院・医療費・専門病院の確保が欠かせない
リチャードソンジリスを飼うということは、 齧られることを受け入れるだけでなく、 歯の病気と一生向き合う可能性を理解することでもあります。

覚悟③ 発情期は本当にきつい。性格も生活リズムも変わる
リチャードソンジリスは、発情期になると行動や性格が大きく変わることで知られています。 この変化は個体差はあるものの、多くの飼い主が「想像以上に大変だった」と感じるポイントです。
一般的に見られる発情期の変化には、次のようなものがあります。
- 落ち着きがなくなり、行動量が増える
- 警戒心が強まり、攻撃的になることがある
- 噛む、威嚇するなど性格が変わったように見える
- 食欲にムラが出たり、普段のペレットを食べなくなる
- フェロモンの影響で、においが強くなる
発情期の期間は数週間から1ヶ月程度続くこともあり、 その間は「いつもの可愛さ」を期待できない場合もあります。 飼い主側には、行動の変化を理解して受け止める姿勢が求められます。
我が家で実際に経験した発情期の様子
我が家のリチャードソンジリスの場合、発情期は約1ヶ月続きます。 この期間は、気性が荒くなり、噛んでくることもあります。
食事面では、普段食べているペレットをほとんど食べなくなり、 小松菜とミルワームだけは食べてくれる状態になります。 そのため、発情期の間はこの2つを中心に様子を見ながら過ごしています。
また、においも強くなり、回し車をほぼ常に回し続けるため、 見ている側としても「ライ自身も相当しんどい時期なのかもしれない」 と感じることがあります。
発情期は一時的なものですが、毎年繰り返される可能性があります。 リチャードソンジリスを飼うということは、 この変化を理解し、長期間付き合っていく覚悟を持つことでもあります。

覚悟④ 発情期後の過食と体重変動は想像以上に大きい
リチャードソンジリスは、発情期が終わると 食欲が一気に増す傾向があります。 発情期中に食事量が落ちていた反動もあり、 急に「何でも欲しがる」状態になることは珍しくありません。
一般的に見られる変化には、次のようなものがあります。
- 食欲が急激に回復・増加する
- おやつや食べ物への執着が強くなる
- 体重が短期間で増えやすくなる
ここで注意しなければならないのが、 体重変動の大きさです。
我が家で実際に起きている体重変化
我が家のリチャードソンジリスは、 発情期になると体重が300g台まで減少します。 一方で、食べ始めると550g前後まで増えることがあります。
この体重差を見ると、 短期間でこれほど変動すること自体が非常に怖い と感じています。
さらに、食欲が戻ったあとは行動量が落ちる傾向があり、 ほとんど動かず、フットクッションの中から出てこない こともあります。
体重増加が続くと何が起きるのか
体が小さいリチャードソンジリスにとって、 急激な体重増加は内臓や関節への負担につながります。
- 肥満による運動量の低下
- 関節や内臓への負担
- 体調変化に気づきにくくなる
発情期後は「元気になって安心」ではなく、 体重・食事量・行動量を意識的に管理する時期です。
リチャードソンジリスを飼うということは、 発情期前後の激しい体重変動とも向き合い続ける覚悟 を持つことでもあります。

覚悟⑤ 病院・医療費・ペット保険は現実的に考える必要がある
リチャードソンジリスを飼ううえで避けて通れないのが、 動物病院と医療費の問題です。 犬や猫と違い、どこの病院でも診てもらえるわけではなく、 エキゾチックアニマル対応の病院を探す必要があります。
また、診察や治療内容も専門的になりやすく、 検査・麻酔・手術・通院が重なると、 医療費は高額になりやすいのが現実です。
- 対応できる病院が限られている
- 専門的な検査や処置が必要になる
- 手術や長期通院になるケースもある
我が家で実際に助けられたペット保険
リチャードソンジリスが オドントーマの手術を受けた際、 治療費はおよそ15万円かかりました。
このとき、保険に加入していたことで 自己負担額が大きく抑えられ、 精神的にも経済的にも本当に助けられたと感じています。
もし無保険だった場合、 治療を受けさせる判断そのものが 簡単ではなかったかもしれません。
リチャードソンジリスを飼うということは、 「病気にならないこと」を祈るだけでなく、 病気になったときに迷わず治療を選べる準備を しておくことでもあります。
病院探しとペット保険の検討は、 お迎え前に必ず済ませておくべき覚悟ポイントです。

覚悟⑥ 旅行や長時間の外出は難しくなる

リチャードソンジリスを飼い始めて感じやすい現実のひとつが、 旅行や長時間の外出がしづらくなることです。 犬や猫と比べると、預け先の選択肢が極端に限られます。
一般的なペットホテルの多くは犬猫対応が中心で、 リチャードソンジリスのような エキゾチックアニマルを預かってくれる施設はほとんどありません。
- 対応できるペットホテルが少ない
- 環境の変化に弱く、預けること自体がストレスになりやすい
- 知識のない預け先では事故のリスクが高い
一部では、エキゾチック対応の動物病院や専門施設で 一時預かりをしてもらえるケースもありますが、 数が少なく、事前の確認が必須です。
そのため、リチャードソンジリスを飼うと、 外出や旅行の予定はジリス中心で考える生活に変わっていきます。
急な外泊や長時間の留守が難しくなり、 「気軽に出かける」という選択肢は減っていきます。
リチャードソンジリスを飼うということは、 生活の自由度が下がることも含めて受け入れる覚悟 を持つことでもあります。
覚悟⑦ 音に敏感。生活音にも気を配る必要がある

リチャードソンジリスは、見た目の印象以上に 音に敏感な動物です。 静かな生き物だと思って迎えると、ギャップを感じることがあります。
外の物音や家の中の生活音に反応し、 突然警戒行動を取ることがあります。
- 工事音や車の音に反応する
- インターホンや来客の物音に驚く
- 家族の足音や物を置く音に反応する
警戒しているときには、 鋭い鳴き声を出したり、 後ろ足で床を叩く足ダンをすることがあります。
そのため、飼育環境では できるだけ急な音や大きな音を避ける配慮が求められます。 テレビや掃除機の位置、ケージの設置場所なども 事前に考えておく必要があります。
リチャードソンジリスを飼うということは、 自分の生活音にも気を配りながら、 静かな環境を意識して整える覚悟 を持つことでもあります。

覚悟⑧ トイレは完璧に覚えない。掃除は日常になる

リチャードソンジリスの飼育では、 トイレと掃除の問題を避けて通ることはできません。 犬や猫のように、必ず決まった場所だけで排泄してくれるわけではありません。
個体によっては、ケージ内の特定の場所を トイレとして使うこともありますが、 それが常に安定するとは限りません。
- ケージ内ではある程度決まった場所ですることがある
- 部屋んぽ中は場所を選ばず排泄することが多い
- 動きながら排泄することもある
そのため、部屋んぽをさせる場合は 掃除が前提になります。 床やラグ、家具の近くなど、 排泄されても対応できる環境づくりが必要です。
また、排泄物だけでなく、 床材や砂、食べこぼしなども日常的に出ます。 こまめな掃除を怠ると、においや衛生面の問題につながります。
リチャードソンジリスを飼うということは、 「完全にきれいな生活」を求めない覚悟 と、日々の掃除を当たり前として受け入れることでもあります。

覚悟⑨ 寿命は短い。別れは思っているより早く訪れる

リチャードソンジリスを飼う前に、必ず知っておくべき現実が 寿命の短さです。 見た目の可愛さや日々の癒やしとは裏腹に、 一緒に過ごせる時間は決して長くありません。
一般的に、リチャードソンジリスの寿命は およそ3〜5年とされています。 個体差や飼育環境によって前後はしますが、 犬や猫と比べると短い期間です。
- 数年単位で老化が進む
- 体調の変化が急に現れることがある
- 病気の進行が早いケースもある
毎日一緒に過ごしていると、 この時間の短さを強く意識することは少ないかもしれません。 しかし、ある日突然「老い」や「終わり」を意識する瞬間が訪れます。
リチャードソンジリスを飼うということは、 必ず別れが来ることを理解したうえで向き合う覚悟 を持つことでもあります。
だからこそ、日々の時間を大切にし、 体調の変化に気づき、後悔のないように接することが求められます。

覚悟⑩ それでも「飼ってよかった」と思えるか

ここまで見てきたように、リチャードソンジリスの飼育には 脱走、噛む・齧る行動、歯の病気、発情期の変化、体重管理、医療費、 生活の制限、寿命の短さなど、 「可愛い」だけでは乗り越えられない現実が数多くあります。
正直なところ、何も知らずに迎えていたら 「こんなはずじゃなかった」と感じてしまう人がいるのも無理はありません。 その意味で、リチャードソンジリスは 誰にでもおすすめできるペットではないと思います。
一方で、これらの現実を理解し、 準備と覚悟を持って迎えた場合、 リチャードソンジリスはかけがえのない存在になります。
「飼うのはやばい」と言われる理由は確かにあります。 しかしそれは、 軽い気持ちで飼ってはいけない動物という意味でもあります。
すべてを理解したうえで、 それでも一緒に暮らしたいと思えるかどうか。 その問いに自分なりの答えを出せる人にとって、 リチャードソンジリスとの暮らしは、 後悔よりも「出会えてよかった」と思える時間になるはずです。

まとめ|リチャードソンジリスは「可愛い」だけで飼うと本当にやばい

リチャードソンジリスは、見た目の可愛さから 「飼いやすそうな小動物」と思われがちです。 しかし、実際の飼育には多くの覚悟が必要になります。
- 脱走・逃走のリスクが非常に高い
- 噛む・齧るのは本能で止められない
- 歯の病気(オドントーマなど)は命に関わる
- 発情期は性格・食事・生活リズムが大きく変わる
- 発情期前後で体重が大きく増減する
- 診てもらえる病院が限られ、医療費も高額になりやすい
- 旅行や長時間の外出が難しくなる
- 音や環境の変化に敏感で配慮が必要
- トイレは完全には覚えず、掃除は日常になる
- 寿命は短く、別れは意外と早く訪れる
これらを見て「大変そう」「無理かもしれない」と感じたなら、 無理に飼う必要はありません。 それは、命に対して誠実な判断だと思います。
一方で、これらすべてを理解したうえで 「それでも一緒に暮らしたい」と思える人にとっては、 リチャードソンジリスは かけがえのない家族になります。
「飼うのはやばい」と言われるのは事実です。 しかしそれは、 軽い気持ちで飼ってはいけない動物という意味でもあります。
この現実を知ったうえで選ぶかどうか。 それが、リチャードソンジリスを迎える前に 一番大切な判断です。

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